5分でできる!Bookwalker/ニコニコ書籍で東方同人小説を販売するまで
簡単にまとめると
はじめに
2018/04/28より解禁となった、東方Project二次創作同人誌の電子書籍販売(https://www.famitsu.com/news/201804/25156325.html)。ローンチタイトルを経て、現在は誰でも自由に自分の同人誌をBookwalker/ニコニコ書籍両サイトで販売することができます。実際の窓口はBookwalkerなので、以下では配信サイトは一律Bookwalkerと記述します。
私もC94新刊を始めとして個人誌を全てそちらで販売してますので、この記事を見て役に立った!という人もそうでない人も買ってください。最初の5冊は無料 なので、この記事の通りに作るとこうなるんだ、という見本にもどうぞ。
この記事では、Bookwalkerで東方二次創作同人誌を販売するまでに必要な作業を解説します。漫画は苦手みたいなので、このepub制作方法は非推奨です。epubの作製方法だけ知りたい忙しい人は、ここから読むといいと思います。
Bookwalker個人出版
実は東方Projectの同人誌よりも前に、Bookwalkerでは同人誌を販売することができていました。個人出版という枠組みで行われていたそれはオリジナル専用だったのですが、東方Projectに限り、二次創作作品の取扱が解禁された形となります。
著者センターに登録する
というわけで、epub作製の前にBookwalkerで個人出版するために、自分を著者として著者センターに登録する必要があります。流石にこの下準備を込みにすると5分では終わりませんが、そんなに手間ではないのでさくっとやってしまいましょう。既に終わってる人は読み飛ばしてください。
登録に必要なものは主に以下の通りです。もう認証済ませちゃったので今確認できないんですが、だいたい合ってるはず。
- Bookwalkerアカウント
- アカウントに対して著者情報が紐付きます。
- このアカウントのユーザー名が使われるとかではないです。
- 住所氏名
- 電話番号
- 出版社名
- だいたいサークル名になると思います。レーベル名と被るけど。
- ただしニコニコ書籍では自動的に「東方電書流通」と表示されるみたい
- 本人名義の受け取り口座
そんなに間を置かずに登録完了メールが来るので、そうしたら著者センターにログインしましょう。早速本の販売登録をしていきたいところですが、これから本題であるepubの作製に入ります。
epub
リフロー形式でいこう
Bookwalkerで販売できる電子書籍はepubフォーマットでなければなりません。いかに入稿用のpdfやpsdを持っていようが、専用の形式にまとめ直す必要があります。余談ですが、このepubは実は一定の規則を持ったzipでしかないので、中身を見るのに専用のソフトが必要だということはありません。興味のある方は作り終わったepubを解凍ソフトで解凍して覗いてみましょう。
その一定の規則が面倒なので、手作りなんてしていられません。古の作家の方はhtml手打ちでサイトを作っていたことがあるかもしれませんが、それよりもなお面倒です。たまに、原稿持ってるんだから物理書籍と電子書籍同士に発売できるでしょ、とか言う人がいますが、電子版を見据えて編集する必要があったり、そもそも日本語だとうまいこと原稿からepubにならなかったり、障害が多いので許してあげてください。日本語が表現豊かすぎるんだ。
その一番の原因は、リフロー形式epubの制作の手間にあります。リフロー形式とは、画面サイズや文字サイズによってビュアーがよしなにレイアウトを組み直してくれる形式のことです。反対は固定(fixed)レイアウトで、原稿のこの位置にこの文字をこの大きさで置く指示を記述したものです。
小説を固定レイアウトで作ると、小さい端末で読んだときに悲しいことになります。なので、この記事とは別の手段でepubを作るときも、なるべくリフロー形式にしましょう。漫画は基本的に画像が並んでいるだけなので固定でもあまり問題はないのですが……1。
そして最も大切なのは、特殊な編集をしている小説本はそもそも電子書籍に向いていないことを念頭に置くことです。電子書籍は電子書籍として、ある程度割り切って考えましょう。タイポグラフィック小説なんてもってのほかです2。
でんでんコンバーター
Webサービス、デスクトップアプリケーション、制作代行などepubを作る手段はいくつかありますが、私はWebサービスであるでんでんコンバーターを使わせてもらっています。比較できるほど他のサービスやソフトを探したわけではないので、おすすめがあったら教えてください。
でんでんコンバーターの特徴は以下の通り。
利点 | 欠点 |
---|---|
markdown拡張なので追加記述が少なくて済む | 文字数が多いと死ぬ |
ファイルをまとめてアップロードするだけ | ファイルサイズが大きいと死ぬ(3MB) |
必ずリフローで出力される | 複雑なレイアウトは表現できない1 |
縦書き横書き両対応 | |
ドキュメントが整っている |
とにかく気軽なことを重視しています。ただ、文字数が多いと死ぬ件については、ワンチャンで15万字程度とどうしようもないので、弊サークルの800Pの総集編などは諦めています。が、うちの単行本はだいたい120Pくらいで5,6万字なので、普段使いには事足りるでしょう。
さて、ドキュメントへの言及どおり、チュートリアルが用意されているので、お時間がある方はそれに従ってepubを作ってもらえばそれで終わりなのですが、忙しい人のために拙作「藤原妹紅は死が怖い」の実際の原稿を例に出しながら、実際の私の作業フローを書いていきます。仕上がりは実際に無料DLして読んでみてください。つまりここからが本題です。
1.原稿のテキストを用意する
よほど特別なエディタを使っていなければ、txt形式ですぐ用意できるでしょう。私は元々txt形式で原稿を持っているので、それをepub用にコピーします。軽微とはいえ、特殊記法で記述を追加するので、物理書籍用の原稿とは必ず分けてください。
2.行頭を整形する
物理書籍での編集のときは(InDesignなので)行頭のスペースを落としますが、こちらは行頭の字下げを全角スペースに統一します。半角が混ざってたりする場合はテキストエディタ等で一括置換などしてしまいましょう。正規表現を使える人は捗るかと思います。
3.改ページを記述する
章と章の間など、必ず改ページしてほしい場所があると思います。そういう場所に改ページ記号を仕込んでいきます。 =
の数は3つ以上ならいくつでも同じです。
生きるために生を恐れ、死なないために死を疎む。 生きて生き地獄、死んで死に地獄。 命とは、かくも恐怖することに忙しいものである。 ================= # 一章 囲炉裏の炭に火がつかない。
4.章見出しを設定する
上の例の「一章」の前に、#
がついているのが分かるでしょうか。これが見出しを表す記法で、htmlでいうところの<h1>
です。きちんと見出しを設定すれば、でんでんコンバーターは目次まで作ってくれるので必ずやりましょう。
改ページしたら章見出しをつけないといけないわけではないので、たとえば奥付などでは見出しを設定していません。また、私の本では#
しか使っておらず、続く##
等は使用していません。
5.ルビを設定する
ルビは {文字|もじ}
で記述します。
・蓬莱の人の形『{藤原|ふじわらの}{妹紅|もこう}』
6.縦中横を設定する
自動でやってくれるオプションがあるのですが、英文が入ってたりすると誤爆しかねないので手でやっています。主な利用用途は!?
です。
「だ……だれ^!?^」
7.挿絵を入れる(Optional)
後述しますが、原稿ファイルと一緒に画像を突っ込むと、そのファイルを挿絵に指定できます。![](ファイル名)
で指定しましょう。
「ごめんね……ごめんね……」 ![](illust2.png) 死を得たばかりに、慧音を悲しませてしまった。
8.下寄せを設定する(Optional)
おわり
や了
やなど、本文の〆の言葉を下寄せにしたい場合があるかと思います。そういう場合はhtmlタグを書き、専用のクラスと属性を指定します。
久しぶりに修行でもしようか。そう考える竹林の帰路であった。 <p class="text-right" markdown="1">To be continued eternally</p>
9.表紙画像を用意する
サイトに出る表紙画像は著者センターで設定できますが、epubにも表紙を入れるために用意しておきます。名前は必ずcover.(jpg|png|gif)
にしましょう。でないと読んでくれません。
10.でんでんコンバーターに突っ込む
ここまで準備できたら、いよいよepubを生成します。まず、用意した「原稿テキスト」「表紙画像」「挿絵画像(あれば)」をファイル選択でまとめて選択しましょう。その後、指示通りに設定していきます。私の設定は以下の通り
- タイトル:藤原妹紅は死が怖い
- 扉ページ生成時に使われる他、ビュアーではノンブルの横に表示されます
- 作成者:五十嵐月夜
- 著者。同じく扉ページ用。
- ページ送り方向
- よしなに。今回は縦書き。
- ページ自動生成
- 扉ページ:オン
- 目次ページ:オン
- その他
- 表紙ページスキップ:オフ
- 表紙画像だけのページが1ページ目にできます
- 自動縦中横:オフ
- 拡張子:オフ
- spanで囲む:オフ
- 表紙ページスキップ:オフ
「作成したepubをプレビューする」にチェックを入れて、変換ボタンを押しましょう。問題なく生成されたら、裏でダウンロードしながら、完成したepubをブラウザ上でプレビューすることができます。表示も問題なければ、ダウンロードされたepubをきちんと分かるように保存し直しておきましょう。
実際にBookwalkerで読んだときにどう表示されるのか気になる人は、Bookwalkerのデスクトップ版リーダーを使いましょう。このリーダーにはepubを読み込む機能がついているので、リーダー特有の表示も含めて確かめることができます。
なお、でんでんコンバーターで作製されたepubはepub3仕様に準拠しています。登録するところにepub3に準拠していること、と書かれていますが、心配無用です。
本を販売登録する
では早速、完成したepubをひっさげて販売登録しましょう。著者センターから「書籍」>「本の追加」と進んで、必要事項を記入していきます。基本的には指示通り入力すればいいので、注意するところだけ特記します。また、ほとんどの情報は販売中でも変更することができます。
試し読み用EPUBファイル
拙作の場合ページ数がそこそこあるので、先頭10%から勝手に用意してくれたもので十分なのですが、きっちりここまで試し読みとして提供したい!という場合は、専用にもう一つepubを用意しましょう。
二次創作指定
東方二次創作なのでチェックを必ず入れましょう。
価格
税抜きで指定します。印税は50%なので、売れた分に消費税を追加したものの半額から、源泉徴収された金額が振り込まれます。売上1円から振り込んでくれる上に手数料はBookwalker持ちなのが嬉しいですね。ただ、翌々月払いなのでちょっと遅いです。
無料で販売したい場合は「価格を0円にする」にチェックを入れましょう。あとで変更することも(たぶん)可能です。
祝!公開
販売登録してからBookwalkerのチェックが入り、早ければ翌日にでもサイトに並びます。Bookwalkerのほうは予約販売に対応しているので、たとえば販売開始日時をコミケ当日にする、ということもできます。また、もちろん販売停止も可能です。
ニコニコ書籍のほうには自動的にサイトに配信されるので、作家が何かする必要はありません。ただし、どうも著者センターから見られる売上にはニコニコ書籍分はカウントされていないようなので、現状では支払い報告メールの金額から売上を逆算する他なく、個別の商品の売上について知る方法は提供されていないようです。
まとめ
タイトル通り、慣れてからは一冊5分程度でepub作製から販売申請まで行っています。コストが低く、それでいて既存同人誌電子書籍プラットフォームよりもユーザー数が多いので目に付きます3。Melonbooks電子書籍がリフローepubに対応していないこともあって、目立った動きがなければ電子はしばらくBookwalkerメインでいいかな、と思っているほどです。
ただ、プラットフォームの盛り上がりが必要不可欠であることには変わりないので、この記事を参考に東方二次同人誌がもっとBookwalkerに増えてくれることを願っています。疑問点があればtwitterなりで気軽に質問してもらえば、分かる範囲で答えます。
最後におまけとして、実際に作った「藤原妹紅は死が怖い」のでんでんコンバーター形式原稿を公開します。参考にしたりepub作ったりする分には構いませんが、原文ママで作ったepubの再配布や販売はやめてくださいね。見つけたら5000兆円払ってもらいます。
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漫画、イラストはソフト側でepub吐いたらそれでいい感じにできそうですね。クリスタとか。小説も一太郎とかありますけどどうなんでしょう。インデザは昔使ってなかったのもあって、手間に見合わないと判断しました^q^↩
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そもそも電子書籍は「読み手の読みやすいようにレイアウト調整できる」のが利点なので。どうしても思った通りに読んでほしかったら、原稿を画像出力して並べるか固定レイアウトにするしかないわけですが……。↩
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売上はともかく、初月である2018/05の合計DL数は300を超えていました。初期5冊を無料にしてるからですが、こと見られるという観点では強かった。流石に毎月減ってはいますけど。なお実際読了したかは不明。↩